AARポータルで挑む、学習者が主役の「検証型」振り返り改革

玉野市教育委員会では、GIGAスクール構想第2期において弊社の「GIGAスクールパック」を選定いただき、2026年4月より本格運用されます。このたび、「GIGAスクールパック」でまなびポケット上から提供しているAARポータル、心の健康観察、ダッシュボードを、モデル校において 先行してご利用いただきました。
先行導入を通じて、導入の背景と現在地、そしてこれからの展望について、玉野市教育委員会 学校教育課 山田恭平氏にお話を伺いました。

AARポータルとは?
AARポータル(Anticipation-Action-Reflection)は、子どもたちが学習の「見通し(A)」「実行(A)」「振り返り(R)」を記録し、先生がそれに対してフィードバックを行うためのプラットフォームです。特に「振り返り」の可視化に強みを持ち、写真やスタンプ機能を活用することで、従来の紙のノートでは難しかった、動的な学習プロセスの蓄積を可能にします。



心の健康観察とは?
まなびポケットで利用可能な、児童・生徒の毎日のメンタルヘルス状況を把握し、学校全体でサポートするための機能です。
まなびポケット上に表示される4つの選択肢から児童・生徒が自身のメンタルヘルスに合う選択肢を回答し、教職員はその結果を確認することができます。ネガティブな回答が続いている児童・生徒はアラート表示され、教職員による支援が必要な児童・生徒の早期発見をサポートします。また、まなびポケットのアカウントから利用できるため、すでにまなびポケットをご利用中の場合、新規アカウント登録は不要であり、学校側のシステム管理の負担を軽減します。

玉野市役所
玉野市役所

教育委員会名
玉野市教育委員会
所在地
岡山県玉野市
市内学校数
小学校13校
中学校7校
まなびポケット利用コンテンツ
BANSHOT、eboard、MEXCBT、NHK for school、ミライシード、WEBQU
インタビュー対象者
玉野市教育委員会 学校教育課 山田恭平氏

AARポータルで実現する「学習者中心の振り返り」

AARポータルを活用しようと思ったきっかけを教えてください。

玉野市では、「これが本市の強みだと言えるものをつくりたい」という問題意識を持つ中で、GIGAスクール構想第2期を大きな転機と捉えました。
以前、文部科学省のリーディングDXスクール事業*1に参加し、ICT活用のメリットを実感する一方で、もっと端末を“先生のための道具”から、“児童・生徒のための道具”にしていくにはどうするべきか、という課題も見えてきました。

そこで目指したのが、学習者のためのICT活用です。AARポータルは、子ども自身が学びを振り返り、次につなげていくための仕組みとして、その考え方が合致していました。

学習の振り返りに関して、これまでの取り組みや課題感について教えてください。

岡山県が推進する岡山型学習指導のスタンダード「授業5」*2に基づき、まとめや振り返りを重視した授業づくりは、これまでも進めてきました。しかし、玉野市の学力調査の分析からは、振り返りが形骸化し、本当の意味での振り返りになっていないのではないかという課題も見えてきました。

現在は、授業の終わりに確認のための問題を実施し、その結果をもとに学習内容を振り返り、次の課題を考えるなど、子どもたち自身が「検証」できる振り返り方法を、さまざま模索しています。
また、できた瞬間の写真や、気持ちといった「学びの実感」を残すことも、大切な振り返りだと考えています。そうした振り返りの在り方を模索する中で「学びの実感」も残すことができるAARポータルを知り、取り入れてみようという話になりました。

どのような変化が見られるようになりましたか?

モデル校からは、「学びの記録が蓄積され、すぐに振り返ることができる」「時間割ベースで過去の学習に戻ることができる」といった声が届いています。家庭学習で振り返りを見返す実践をしている学校もあります。

一方で、課題配信や学習資料も含めてデータを一元化したいといった声もあり、今後に向けた改善点も見えてきています。

AARポータルに蓄積されたデータは、将来的にどのような教育施策に繋げていきたいとお考えでしょうか?

AARポータルに蓄積される日々の授業の振り返りデータは、将来的に多層型支援システム(MTSS)*3をはじめとした教育の検証や充実の基盤になると考えています。
全体への支援、個別支援、特別支援へと、子ども一人ひとりのデータをもとに授業や支援を検証していく。そのための“根拠”として、活用していきたいと考えています。

日常に埋もれがちな“変化”を、確かな気づきへ

心の健康観察を導入するにあたってのきっかけを教えてください。

心の健康観察を導入する以前は、「気づいたあとにどう動くのか」「誰が責任を持つのか」といった点が課題でした。フォーム運用では入力ミスによる混乱もあり、本当に支援が必要な子どもを見逃してしまうリスクもありました。

先生方からのお声や導入効果を教えてください。

まなびポケットでの運用により、誤入力が減っただけでなく、支援が必要な児童生徒がアラートで表示されるため、小さな変化を見逃しにくくなりました。また、校内で子どもの状態を共有しやすくなった点も、大きな効果だと感じています。

一方で、体制づくりの難しさは依然としてあります。そのため、週1回から始めるなど、無理のないスモールスタートを大切にしながら、日常の中で子どもを見守る仕組みとして定着させていきたいと考えています。

日常のデータを“対話の材料”に変える

ダッシュボードはどのように活用されていますか?

玉野市が目指しているのは、日常の実践をデータとして可視化し、次の行動につなげる循環です。
出欠やテスト結果、学習の振り返り、心の状態といった情報を、評価のためではなく、対話と支援のための材料として年度末の引き継ぎ時などにも活用したいと思っています。

教育委員会としては、ダッシュボードを通じて学校全体の状況を把握しつつ、学校が委縮しないよう配慮しながら指導助言を行っています。根拠となるデータがあることで、学校訪問や引き継ぎの場面でも、状況を踏まえた対話が可能になります。

データが日常に寄り添い、学びと支援を循環させる

最後に、玉野市の今後の展望を教えてください。

玉野市が目指しているのは、特別な施策や一時的な取り組みではありません。
日々の授業、日常の関わり、その一つひとつを丁寧に積み重ね、次の行動へとつなげていく教育の循環です。

AARポータルを通して、子どもたちは学びの深まりを実感し、次につなげることができます。教員は、子どもたちの振り返りを見て、次の授業改善につなげることができます。その真ん中にダッシュボードがあることで、両輪がうまく回っていくと考えています。
もちろん学校経営プランや先生方の想いを大切にしながらです。

学校評価など、年に一度の数値だけで学校を語るのではなく、日常的にダッシュボードを見ることで、検証から改善までのスピード感があがります。検証ができる学校は強いと思っています。
学びの中心は、学習者である子どもたちです。子どもたちに寄り添った授業や支援ができるよう、データもうまく活用していければと考えています。

山田先生のお話からは、データを管理や評価のためではなく、子ども一人ひとりの学びと成長を支えるために活かそうとする姿勢が伝わってきました。
山田小学校・大崎小学校の先生方のお話は、こちらのレポートで紹介していますので、ぜひご覧ください。

*1 リーディングDXスクール:文部科学省が指定する実践校を中心に、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末とクラウド環境を「普段使い」しながら、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、情報活用能力の育成、校務DXの推進を図り、その成果を全国に普及・展開するための事業。
*2 授業5(ファイブ):岡山県教育委員会が策定した「岡山型学習指導のスタンダード」において示されている、一単位時間の授業改善の指針。授業の中で「めあてを示す」「自分で考える時間を確保する」「達成度を確認する」「学習内容をまとめる」「振り返る」という5つの視点を大切にし、児童生徒が主体となる授業づくりを目指している。
*3 多層型支援システム(MTSS):学習面・行動面・情緒面などを含め、すべての子どもへの予防的・基盤的支援(第1層)を充実させたうえで、配慮を要する子どもへの小集団支援(第2層)、集中的な個別支援(第3層)をデータに基づいて段階的に行う包括的な支援システム。インクルーシブな学校づくりの基盤として、国内外で導入が進められている。