教員の働き方改革を推進中!学校と家庭をつなぐ保護者向けデジタル連絡機能

鹿児島市では教育データの利活用を広げていくために、学習eポータルにまなびポケットを選択しました。現在はデジタルドリルを使った学習をはじめ、出欠連絡やお便りの配信、学習履歴の共有に保護者向けデジタル連絡機能を導入するなど、学校生活のさまざまな場面で活用しています。実際どのように活用し効果を感じているのか、また今後の展望について鹿児島市教育委員会 学校ICTセンターの木田博氏に詳しくお話をお伺いしました。

鹿児島市教育委員会 学校ICT推進センター 木田博氏
鹿児島市教育委員会 学校ICT推進センター 木田博氏

教育委員会名
鹿児島市教育委員会
所在地
鹿児島県鹿児島市
市内学校数
小学校78校
中学校39校
まなびポケット利用コンテンツ
BANSHOT、eboard、MEXCBT、navima 、NHK for school
インタビュー対象者
鹿児島市教育委員会 学校ICT推進センター 木田博氏

教育データ利活用の実現に向けて、全教員および児童・生徒に県域アカウントを作成

まなびポケットを導入された経緯を教えてください。

鹿児島県では令和3年2月に、全国に先駆けて全市町村で教員および児童・生徒1人1つの県域アカウントを作成しました。県内の小中学校であれば、どこへ転校、または異動しても継続して使えるアカウントを持つことで、教育データヘの活用を考えていたためです。

こうした中、MEXCBT(メクビット)に接続できる入口として、また児童・生徒たちの学習ログ・ライフログを活用していくための学習eポータルを検討していました。現在契約しているコンテンツの数やサービス内容、無料サービスの充実度、県域アカウントとSSO対応できるかなど独自の評価項目を10点ほど上げて点数化し、4社を比較してみたところ、一番点数が高かったのがまなびポケットだったのです。そこで、鹿児島市では、まなびポケットを学習eポータルとして導入することにしました。

鹿児島市教育委員会様の学習eポータル比較表
鹿児島市教育委員会様の学習eポータル比較表

保護者アカウントを一括作成。連絡ツールに加え、家庭でも学習ログが見られるように

保護者向けのデジタル連絡機能を全校一斉導入した経緯と狙いを教えてください。

GIGAスクール構想が始まった時点では、授業の中にICTを取り入れていくところからスタートしました。今はそれだけではなく、教育自体をDXしていかなければいけないフェーズに入ってきています。保護者との連携や学校業務の効率化といったことをトータルに考えた場合、学習eポータルと一元化して使えるサービスを導入するのが、教員にとっても保護者にとっても負担が少ないと考え、まなびポケットの保護者向けデジタル連絡機能を一括導入することにしました。

現在の利用状況はいかがでしょうか?

今までは電話連絡が中心でしたが、大規模な学校では朝の欠席連絡が鳴り止まず、保護者からするとつながらない状態が続きストレスになっていました。学校用のメールサービスを使う学校も増えましたが、送る側は手順に手間がかかる上、送られたどうかの確認ができません。一方、学校側も同じ時間帯に一気に送られてくるメールの対応に追われてしまいます。

電話やメールサービスの不便さを解消してくれたのが、まなびポケットの保護者向けデジタル連絡機能でした。朝の忙しい時間でも送る側も受け取る側もストレスがなく、どこにいても瞬時に出欠を把握することができるのでとても好評です。

実は先日、日本列島が大寒波に襲われたとき、鹿児島市にも雪がたくさん降り、多くの学校では登校時間が変更になりました。その際の連絡にメールサービスを利用していた学校では、アクセスが集中しサーバーがダウンしてしまい、連絡が行き届かないという事態になったと聞いています。一方、まなびポケットの保護者向けデジタル連絡機能を利用している学校は、トラブルなくスムーズに配信できました。

出欠連絡の先生の確認画面イメージ
出欠連絡の先生の確認画面イメージ

今現在、保護者へのお便りをデータで一斉配信している学校では、どんな声が上がっていますか?

紙のプリントを配布していたときは、児童・生徒が渡し忘れて保護者の手に届かないということが結構ありましたが、それが解消されたという声をよく聞きます。また、外出先でも確認ができるので、お仕事をされている保護者からは、とても助かっているという声もいただいています。

連絡帳での訂正連絡イメージ
連絡帳での訂正連絡イメージ

一方、教員側もメリットを感じているようです。例えばテストを返却した日に、間違いが多かった問題を事前にお知らせし、家庭でもう一度見てもらうようにお願いするなど、その日のあったことをすぐに伝えることができるのがデジタルの良さですよね。

怪我や子供間でのトラブルなどの場合は電話連絡を基本としていますが、保護者と連絡が取れないと報告が遅れてしまうことがあります。こうした連絡の遅れがクレームに発展してしまうこともありましたが、デジタルであればまずはすぐに伝えることができます。こうした迅速な対応が保護者との信頼関係につながっていく。デジタルに変えたことで、保護者との連携がより密になったように感じています。

連絡帳での日々の様子の連絡イメージ
連絡帳での日々の様子の連絡イメージ

また、今の時代、勤務時間外に保護者と連絡を取る際、個人の携帯電話やLINEのメッセージでやりとりをしている教員も少なくありません。LINEメッセージは送られて来たら返信をしなければならず、それが夜中まで延々と続いてしまい、教員にとっては大きな負担になっているという声が上がっていました。でも、まなびポケットの保護者向けデジタル連絡機能を使えば、プライベートのLINEを使わずに済みます。プライベートと業務の切り分けができ、長時間労働の防止にもつながっています。

両者にとってメリットが大きいということですね。

そうなんです。ですが、保護者向けデジタル連絡機能を活用しようと考えた一番の理由は、こうした連絡ツールとしての利便性よりも、学習eポータルとして教育データを利活用することにあります。これまで、児童・生徒の学習データは、教員しか見ることができませんでした。しかし本来、そのデータは児童・生徒のものであって、自分が何を学び、これから何を強化し対策していけばいいのか、児童・生徒自身が知っておかなければならないし、当然その保護者にも知っていただきたい。

まなびポケットの保護者向けデジタル連絡機能の中には、学習履歴が見られる学習ログ機能があります。それを見れば、自分の子どもがどんな学習コンテンツを使って、どのくらい学習しているのかが分かるようになっています。学習履歴がデータ化されていることによって、「ちゃんと勉強したの?」「したよ」「本当に?」といった日々の親子の口喧嘩が減ったという声も聞きますし、どの教材をよく使って勉強しているかを見ることで、その子に合った勉強のやり方が把握できるようにもなります。教員、児童・生徒、保護者3者で学習データを共有できることが最大のメリットだと感じています。

学習ログ画面イメージ
学習ログ画面イメージ

児童・生徒にとっても教員にとってもメリットが大きいデジタルドリル

まなびポケット経由でドリル教材のnavimaを活用されているようですが、導入された経緯を教えてください。

1クラス35〜40人の児童・生徒に対し、教員が1人でその子1人1人に合ったアプローチを行うには、時間的にも物理的にも限界があります。学習の個別化、指導の個別化の実現を考えたとき、デジタルドリルの必要性を感じていました。navimaなら解答が不正解だった際に、誤答傾向に応じて、その子供に合った問題を出題してくれるし、算数や数学では問題ごとに個別の動画が紐付いていて、自分の力で進めやすいと思いました。実際に調査したところ、navimaを使わなかった場合は、1時間に問題を5問しか解けなかったのですが、navimaを使うと、子供たちは自分のペースに合わせて問題を解いていき、早い子は30~40問も解けることがわかりました。理解が早い子はどんどん先へ進み、力をつけていく。

一方、理解が難しい子には、navimaだけでなく教師がその子に寄り添いながら個別に指導することで、勉強が嫌いにならないようにする狙いがあります。勉強が分からないと授業がつまらなくなるし、学校自体も楽しくなくなってしまうからです。このように、デジタルドリルは様々な習熟度の児童・生徒に、非常に有効だと感じています。

navimaの「個別リコメンド」機能で1人1人の理解度に合った問題が出題される
navimaの「個別リコメンド」機能で1人1人の理解度に合った問題が出題される

ほかにはどんな学習コンテンツを活用していますか?

特別支援学級では映像授業動画とドリル教材を収録したeboadをよく活用していますね。解説が分かりやすく、児童・生徒たちにも人気です。特別支援学級は最大で8名ほどですが、それぞれの児童・生徒の特性や状況はさまざまです。ある児童・生徒に指導している間、他の子が時間を持て余すことなく、しっかり自分で学ぶ場を与えられていると、現場の教員からは好評です。

こうした学習記録がデータ化されることによって、どんなメリットを感じていますか?

児童・生徒が自分の学習履歴を見られることで、今後の学習に役立てるというメリットはもちろんありますが、教員の指導にも役立っていると感じています。ここ数年、学校は教員が若い先生方が増加傾向にあります。昔はベテランの先生がいて、若い先生に自分の教育技術を伝えていく文化がありました。でも今は教員の多忙化が大きな課題となり、その問題解決に向けた業務改善の為、教師間でじっくり指導技術について語り合う時間の捻出も難しく、そういう場が持てなくなっています。

こうした状況の中で、「あの先生が教えると児童・生徒がイキイキしているし、学力も伸びている。どんな授業をしているのだろう?」と思ったときに、そのクラスがどのようなアプリを使って、どのような学習をしているかが見えやすくなるので、教育技術の伝承に一役買っている面もあると感じています。教員みんなで共有できるというのが、大きなメリットですね。

学習eポータルが児童・生徒たちのLMSになって欲しい

最後に鹿児島市の今後の展望を教えてください。

これまで学習eポータルは、教員が指導する上で活用されていましたが、今後は児童・生徒のLMS(Learning Management System=学習管理システム)になって欲しいと考えています。例えば、最近ちょっと元気のない日が続いているなと思っているときに、「心の天気」を自分で見ます。システムからアラート(警告)が表示されることで、自分の状態の変化に深刻になる前に気付くとともに、先生や保護者に相談できるようになるかもしれない。また、この単元が苦手だなと自分の弱点に気づいたら、その部分の学びを強化して学習向上につなげていって欲しい。学習ログやライフログなどの教育データを活用することによって、児童・生徒自身が自分のことを知り、次にどうしたらいいかを考え、改善していく力を身につけて欲しいですね。まなびポケットならそれができると期待しています。

港区教育委員会