お知らせ
LINEとまなびポケットのコラボレーション遠隔授業を実施!
この冬、東京に本社を置くLINE株式会社と、仙台の小学校、そして京都の中学校と、それぞれインターネットで接続した遠隔での授業を行いました。2019年12月に仙台市立錦ケ丘小学校5年生5クラス、2020年1月には京都の同志社中学校2年生1クラスです。
東京から遠く離れた学校との遠隔授業は、リアルな対面での授業とはまた違い、児童生徒のワクワク感と講師(LINE社員)の緊張感が入り交じり、様々な気づきや新たな発見がありました。
なによりも、ICTを活用した授業に懸命に取り組む児童生徒たちの姿など、とても素敵な授業になりましたので、その様子をお伝えします。
目次
1、 LINE社とまなびポケット(schoolTakt)のコラボレーションとは?
2、 今回の遠隔授業のポイント
3、 授業内容ご紹介(情報モラル教育)
4、最後のまとめ ~今後のICT教育へ~
写真左:仙台の錦ヶ丘小学校の様子、 写真右:東京のLINE社での講師の様子
1、LINE社とまなびポケット(schoolTakt)のコラボレーションとは?
もはや、誰もが知っているコミュニケーションアプリ「LINE」。
「え?あのLINE?まなびポケットとコラボって?どういうこと?」と意外に思われるかもしれません。
実は、LINE株式会社では、企業の社会的責任(CSR)活動の一環として、青少年の健全なインターネット利用の啓発活動に取り組んでおり、全国各地の学校を訪問しての講演やワークショップを行っているのです。
いつもは出前授業として、実際に学校に足を運び対面で行うLINE社の情報モラルの授業を、今回は、新たな試みとして、遠隔でやってみよう!ということに。ドキドキ。
そこで登場するのが、まなびポケット人気コンテンツのひとつ、協働学習支援ツール「schoolTakt」です。
このschoolTaktを利用することで、児童生徒と講師が離れた場所にいても、学習状況を講師がリアルタイムに把握することができます。そのため、距離の離れた遠隔授業でも、スムーズに進めることができます。
■遠隔授業でのschoolTakt 活用シーンの例
・離れた場所にいても、児童生徒がタブレットを活用し、schoolTaktに回答や自分の考えを書き込むと、東京にいる講師の手元のパソコンでリアルタイムに一覧で見ることができる。
・児童生徒のアンケート回答件数を、即座に円グラフにして可視化できる。クラスの傾向分析がすぐにできる
・クラス全体の回答一覧を、講師だけではなく、児童生徒同士でも閲覧共有でき、共通理解が促進される
・講師側の操作で、児童生徒の一斉画面ロック/解除が可能なことから、遠隔でも授業コントロールができる
2、今回の遠隔授業のポイント
「遠隔授業は、対面に比べて、臨場感に乏しく、退屈するのでは?」という懸念は、まったくの杞憂に終わりました。
児童生徒は、目の前の大型スクリーンに映し出される講師の姿と、LINEキャラクターに驚き、つかみはバッチリ。
よく練られた情報モラル教育の授業に、どんどん引き込まれていきます。
物理的な距離を感じさせず、schoolTaktを使ったワークショップで、授業は大盛り上がりです。
写真:かわいいキャラクターに惹きつけられます
今回の遠隔授業では、学校の教室に、2つの大画面スクリーンを設置し、1つは講師の姿、もう一方のスクリーンにはschoolTaktの授業画面を投影しました。東京のLINE社でも、同様に2つのモニタにて、児童生徒の様子と、彼らのタブレット操作画面を表示できるように工夫。
講師と生徒の顔や様子だけではなく、schoolTaktの講師画面と生徒画面を共有することで、リアルタイムな双方向コミュニケーションが実現できました。
写真左:仙台市立錦ケ丘小学校、写真右:同志社中学校、いずれも大スクリーン2つ活用
講師からの「講義の伝達」という片方向ではなく、自ら考えさせるワークを通じた双方向のやり取り、しかもschoolTaktを活用したことで、音声だけでは伝わりにくい本音を引き出すことができました。
今回の授業では、児童生徒は一人一台のタブレットを使用。生徒たちはタブレット操作に積極的で、臆することなくどんどん使い方を習熟していきます。まさにICT機器を活用した授業ならでは。
興味深いことに、児童生徒のアンケート結果にて、今回の遠隔授業では、通常の対面での授業と同様に「新しい気づき」が多い結果となりました(LINE社の分析)。
「普段は人前での発言が苦手」といった児童生徒も、schoolTaktを利用した授業や、遠隔でのワークショップでは、自身の本音が出やすい傾向にあるのかも知れません。
そんな貴重な児童生徒たちの本音を含む授業データは、schoolTakt内でデータ保管でき、好きな時に呼び出すことができます。
紙でのワークショップは、後々の紙の整理・保管が大変で、なかなか後で読み直すことが難しいものですが、データでの保管は場所も取らず、検索性と再現性に優れているため、後々の学級経営のための児童生徒の気持ちの分析にも役立つことでしょう。
一方、課題としては、やはり遠隔ゆえに、音声が途切れたり雑音が入ったりといった機器トラブルがあります。しかし、映像は概ね安定し、乱れることもなく、映像と音声の両方で補いながら授業を進めることができました。
LINE株式会社の「情報モラル教育の講師派遣」は全国の小中高等学校から大変多くの要請があるそうです。
このように、遠隔授業を活用することで、距離的な課題をクリアでき、より多くの小中高等学校での授業を展開していくことが期待されます。この営みは、青少年の健全なインターネット活用促進につながっていきます。
さらに、ゆくゆくは、距離と関係ない教育が実現できれば、教育における地域格差の解消にもつながる、そんな夢を描ける授業でした。
■今回の遠隔授業のポイント
・タブレットとschoolTaktの活用により、対面授業と同等またはそれ以上に、生徒の本音を引き出すことができた。
・さらにschoolTaktによって、生徒の手元のワーク状況が把握でき、生徒の理解度・反応を見ながら授業を進めることができた
・schoolTakt内にデータ保管が可能、後々にも活用しやすい
・児童生徒のICT機器への理解、授業への活用への意欲を高めることができた
・講師の移動時間がかからず遠方の学校へも授業を展開でき、教育の地域格差解消へつながる期待。
・ただし、学校では安定したネットワーク環境の確保が必要
3、授業内容ご紹介(情報モラル教育)
今回の遠隔での情報モラル教育の授業は、非常によく練られ、学びが多いものでしたので、簡単に、その内容をご紹介します。
(1)仙台市立錦ケ丘小学校: 悪口編 「悪口を言わない」を考えよう
(2)同志社中学校: 写真編 「不適切な写真を公開しない」を考えよう
(1)仙台市立錦ケ丘小学校: 悪口編 「悪口を言わない」を考えよう
【内容概略】
・同じ言葉でも、受け取り手の感じ方はさまざま。
・例えば「まじめだね」。これが誉め言葉なのか馬鹿にしているのか?対面であれば、発言したときの声の調子や表情、身振り手振りから、判断することができる。
・しかし、メールのような顔の見えない文字だけのコミュニケーションでは、相手の表情や雰囲気がわからないので、誤解が生まれやすい。
・メールと違って、LINEでは、スタンプを使うことで、感情を伝えることができる。
・しかし、同じスタンプでも、やはり、人によって受け取り方が変わる。
・「自分と相手では、考え方/感じ方が違う」ということを理解したうえで、相手の気持ちを考えて、誤解のないコミュニケーションを心掛けることが大切。
【振り返ってみて】
小学生向け授業と侮るなかれ。
非常に含蓄の深い内容で、しかもネットのコミュニケーションに限った話ではなく、これは、現実のコミュニケーションにおいても、老若男女すべての人の他者との関わりにおいて教訓となるものです。
まして多感な時期、これから多くの人間関係を育んでいく小学生には、「自分と相手との違い」は、ぜひ知っておいてほしい考え方です。
仙台市立錦ケ丘小学校の児童たちはとても元気が良く、発言も積極的でした。
授業後の感想で、児童たちからは「自分の感じ方と人は違うと思った」「相手がどう思うか気を付けようと思う」といった声がありました。
(2)同志社中学校: 写真編 「不適切な写真を公開しない」を考えよう
【内容概略】
・写真をSNS等で共有するのは楽しいが、人それぞれ、「公開してもよいと思う」基準が異なる。
・自分が良いと思っていても、公開することで誰かを傷つけたり、トラブルに繋がってしまう可能性がある。
・ネットの特性として、一度公開した情報は拡散されて消すことが難しくなる。
・写真には情報量が多く、気づかないうちに、場所や時間が特定できる情報が映り込んでいることもある。
・写真を公開する前に、「どんな人が見るだろうか」を意識し、公開してはいけないものが含まれていないか考えることが大切
【振り返ってみて】
現在、スマートフォンなどで、写真を手軽に共有できます。しかし、その中には、とても大量の情報が入り込んでいます。持ち物や背景で、住所や個人情報が特定できてしまうことも。
また、1枚の写真だけでは問題がなかったとしても、その写真に写っていた小物が別の写真に写っているなど、複合的な情報によって、個人特定に繋がることも現実に起こり得ます。怖いのは、それがネットでは拡散され、コントロール不可となってしまうことです。
同志社中学校の生徒たちは非常に理解が早く、写真の公開に伴うリスクを認識できていた様子。また、自分がいいと思っていても、相手は違うように感じるかもしれない、どんな人が見るかを意識して気をつけたい、という感想をもらいました。
4、最後のまとめ ~今後のICT教育へ~
今回のように「ICT機器を活用した遠隔授業にて、情報モラルを学ぶ」ということは、限られた授業時間の間に、インターネットとICTへの関心想起、ICT機器操作、ネットのリスク認知、コミュニケーションのあり方、といった、ICTにまつわる諸々の事項を、同時に複数のことを、相乗効果をもって学ぶことができ、非常に有意義なものであるといえます。
これからの教育にICT活用は欠かせません。
しかし、ICT機器を揃えることだけでも、とても大変なことであるため、ハードを揃えるところがゴールになってしまうことがあります。
しかし、実はそこからが始まりです。整備したICT機器を利用して、どんな教育をどのように行っていくかというソフト面を考えなくてはなりません。これには、長年、日本の教育を支えてこられた学校現場のみなさまのお力が重要となってきます。
NTTコミュニケーションズとしては、まなびポケットを、学校内だけではなく、家庭の学習や、遠隔での授業にも、ご活用いただくことで、教育ICTの普及促進を、学校現場のみなさまとともに取り組んでいきたいと考えています。
今回の遠隔授業にあたって、多大なご協力をいただきました仙台市立錦ケ丘小学校と、同志社中学校、LINE株式会社、株式会社コードタクト、ご関係各位みなさまへ、心より感謝申し上げます。